名もない木

何という木だったのだろう。 果樹園へ向かう小道を抜けると、川の手前にその木は立っていた。 夏の日には大きな木陰を川辺に落とし、渓流の音と共に優しく揺れ、 トラックの荷台から葉に触れることも出来た。

ある日、木は突然伐採された。 川の氾濫時に漂流物にならないように、という対策だった。 それから30年経つが、あの木の面影を今でも感じている。