実家の炊事場にあった竈(かまど)は、正月餅や祖母がおはぎを作る時など、主に餅米を炊く時に活躍していた。 釜を乗せ薪を焼べると煙と水蒸気で炊事場は満たされ、雲の中にいるような特別な空間になる。 竈は焚口がふたつある2連式で、白い煙突が天井まで伸びていた。

ある春先、竈に闖入者が現れた。煙突の先から鳥が入り込み出られなくなったのだ。 バタバタと羽音はするが、上まで登れずに途中でずり落ちてくる。 意を決した私は、枝切り用のノコギリを持ってくるなり煙突に刃を当て引き始めた。 静かな炊事場でノコギリの音だけが鳴り響いていた。 3割程切り進んだ時「なんばしよっと!」という大声に驚き私は手を止めた。 異音を聞きつけ慌てて駆け込んできた母の声だった。 その瞬間、鳥は煙突の下を通り焚口から灰だらけで脱出し、大空へ羽ばたいていった。